ここは学校の廊下
そう学校の廊下なんだ!

地味と言う言葉がピッタリな宮田翔はただ一点に目線を向けたまま固まっていた
周りを見渡せばこの学校の生徒達
いつもと唯一違うのは皆一点を注目してるだけ
その一点の先に居たのは真っ白でふわふわの毛皮を付けた赤い瞳の兎が一匹
此方を気にする様子もなく廊下をぴょんぴょんと跳ねては先へ進んでいる
ここが動物と触れ合える牧場とかだったら何の問題もない
ただここは間違いなく学校
皆の目線は兎に集中するなんて当たり前だ

暫くすると兎は目線に気付いたのかその場でピタッと止まると振り返った
佑樹だけではなく他の生徒にも目線を配る
皆、兎の赤い瞳と目があった


「お前らウザいぴょん…
フ、そんなに見つめるなんて僕ってばそんなに魅力的に見えるぴょん?」

兎が喋ってると驚くより先に
可愛い生物のハズが何故か憎しみで溢れだし始めた
周りもこの兎どうやって食べようかと考え始めた時、ツカツカと足音がだんだん近づいてきた


「会長」
スパーン!
と綺麗な音が鳴り響いた
それもその筈
歩いてきた青年はその場にいた兎を何の躊躇もなくスリッパで殴ったのだから
動物保護団体がいたら危なかったところだろう



「リンゴ!痛いぴょん!動物保護団体に訴えてやるぴょん!」

殴った青年は何事もなかったようにもう一度兎をスリッパで殴ると兎を抱えた


「1年生の皆様大変失礼致しました
私は2年住川林檎
こっちの白いのが兎木夜昴で御座います
1年生の皆様はまだ関わりがなく知らない方も多くいるかと思われますがもうすぐ文化祭もありますので多く関わりがある方もきっと出てくるでしょう
きっと…」

そう短文に終えた住川は腕の中で気絶した兎を抱え2年の棟に帰っていった



「なんだありゃ」
そう呟いたのは翔だけではなかった



因みに1年生が2人を高等部の生徒会だと知るのはこの3日後の話である