ぎい、と音を立てて晶の部屋の扉が開いた。
「ただいま、晶」
微笑みながら真也が部屋へ入って来る。
「おかえり」
振り返り、真也へ笑顔を向けると、晶は再び己の正面へと向き直り、作業を始めた。
「なんだよ、せっかく無事戻ってきたのに冷たいな。…何か作ってるのか?」
思ったより淡泊な反応に憮然とし、真也は晶の背後まで近付くと、彼の手元を覗き込み尋ねた。
「ああ、もうすぐ文化祭があるって言われてさ、部活の出し物を作るつもりなんだ」
「…はあ!?」
数秒の間を置いてから真也は素っ頓狂な声を出した。
「お前っこの間見舞いに来た時なんで言ってくれなかったんだよ!言ってくれたら何やるか考えておいたのに」
晶につかみ掛かりそうな勢いで文句を言う。
入院から戻ってすぐに文化祭で出し物をしなければならないのだ、無理もないだろう。
「悪い、でも俺も見舞いに行った後に言われたんだよ。それで言う機会なくてさ」
晶は手を合わせて、申し訳なさそうな顔をした。
そんな晶に真也は軽くため息を吐いた。
「それなら仕方ないか…。てことはあんたも支度は始めたばっかなんだな?」
少しずれた眼鏡を左手の中指で直しながら真也が言う。
「まあな。っていうか今始めたところだ」
手元の作業を進めながら晶は答えた。
晶の手によって机に置かれた紙に絵が描き込まれていく。
彼が描いているのは設計図だ。
「ふうん、それなら俺も今から考えれば間に合うか。久々の部活動だ、期待してろよ」
そう笑顔で告げる真也だったが、眼鏡の奥に見える瞳には一種の“あやしさ”があった。