食堂で夕食が乗ったトレーを持った誠は席を探していた。
時間が丁度混雑している時間に当たったのか何処の席も座られていた。
「(もう少し速くこれば良かったか…)」
もう一度、席を探そう辺り見回した時、深いアメジスト色の髪の青年が座っている周りの席だけが何故か開いているのに気付いた。
「(あいつは…昨日、黒上七と一緒にいた…)」
誠は、青年の向かいの席に立ち止まった。
「おい」
声に反応して青年は誠の方に顔を上げた。
「ここの席座っていいか?」
「………」
誠の指した席は青年の前の席で青年は首を縦に振った。
了解と理解して、誠はトレーを机に置いて座った。
「……………」
「………………」
「…………おい」
食事を始めてから少し経ち誠は青年に声を掛けた。
青年は先程まで進めていた箸を止めてずっと誠を見ていた。
最初は転校生が珍しく見ていたのかと思ったが、そんな様子じゃないことに気付いた。
「さっきから何ジロジロ見てんだよ?
何か言いたいことがあるなら早く言えよ。」
誠の質問に青年は少し考えた素振りをして静かに聞いてきた。
青年と誠の話は騒がしくなってきた食堂の中に消えていった。


  只沈黙に遭遇し


(「………昨日のことを除いて、何処かで会ったことない?」
「…………いや、会った覚えはないな……」)