廊下を男子校には似つかわしくない、女子制服に身を包んだ人物が歩いている。
その人物はある青年を見つけると顔に笑みを浮かべ、手を振り走り出した。
「おーい、れお君!」
ぱたぱたと走るリズムに合わせて短くされたスカートがひらひらと揺れる。
「葵ちゃん、どうかした?そんな慌てて」
れおは目の前の女子制服の人物を見ても驚いた様子はない。
二人はクラスメイトであり、幼なじみであることも関係しているのだろう。
「うん、私さっきHR出れなかったでしょ?だから文化祭の話進んじゃったか聞きたいなって」
はにかみながら手を合わせ頼み込む葵の姿は彼のことを知らない者が見たのならば、彼のことを少女だと思うだろう。
「んー、別に話進まなかったな。いつも通りうさぴょんが暴走して林檎がツッコンでるだけだったし」
ゆっくりと歩き出しながられおが答える。
葵もれおの隣に並び、歩き出す。
「うさぴょんがあの調子じゃ進まないよね。でもさ、私達もそろそろ決めなきゃいけなくない?」
大きな目をきょときょとと動かしながら葵が言う。
文化祭まで日にち自体はあるが、まだ何をやるかさえ決めていないとすれば厳しいものがある。
「だからさ、明日やりたいもののアンケートとるんだってさ。他のクラスとか部活とか見て参考にしようと思ってんだけど、葵ちゃんも行く?」
「うん、行くー。でもさ、もう放課後なんだし、教室に残ってる人って少なくない?部活の方見に行ってその時クラスのことも聞こうよ」
二、三歩れおの前に出るとくるんとターンをし、彼の顔を覗き込みながら尋ねる。
「あー…そだな、そうするか!」
にかっと笑い快諾するれおに葵も嬉しそうに笑い、再び彼の隣へと移動し、歩き出した。



「まずはどこの部室から行く?」
「化学工作部は?あそこいつも面白い展示するじゃん」



―彼らがトラブルに巻き込まれるまで後数分―