第一化学室で誠は薬品を探していた。
LHRで文化祭の出し物が決まり放課後から部活をしてない者を中心に準備に取り掛かった。
が、誠はクラスメイトから腫れ物の様に扱われ、それを観た殿坂が文化祭に使う薬品があるか確認してきて欲しいと頼まれた此処にいた。
幾つかは見つけたが、見つからない薬品があり棚の奥まで探そうとした時。
チリン
「(今の…この前の…鈴の音と同じ…)」
誠は後ろを振り返ったが誰もいなかった。
ガラッ
入口の引き戸が開き、見ると灰色の髪の青年が入ってきた。
「あれ?
先客がいたの?」
青年は教室に入り誠の傍まで近づいた。
誠は警戒して青年を見ていった。
青年は髪も瞳も灰色で左腕に腕章を付けていて、朝会時に報告していた人物だと思い出した。
「(確か、総合生徒会とか言ってたな…。)」
誠が黙っていることを良いことに、青年も誠をジッと観た後、話し出した。
「なぁ、その制服、学校のじゃないけど…
もしかして、この前一年で転校してきた奴か?」
「………ああ…」
青年の質問に誠は警戒したまま返したが、青年は気にせずに話し出した。
「やっぱり!
俺は、二年の灰陸夕火。
お前の名前は?」
「…鏡月誠だ。」
夕火が名前を名乗って、自分が名乗らないのは拙いと感じ名乗った。
「まことってどの漢字で書くまこと?」
「誠実の誠の漢字だ。」
「うわー、良い名前で格好いいな。」
「…そうか、俺は好きじゃない。」
「なんでだよ?
誠って『嘘の無い心』って意味があるんだぜ。
お前の両親は嘘をついて欲しくない子に育って欲しくって付けたんじゃないのか?
って、どうした?」
夕火は誠の様子が可笑しいと気づき、肩に手を置いて顔を覗いた。
誠の瞳は虚ろになっていて、夕火の声が届いていない様だった。
『誠、お前の名前の誠は『嘘の無い心』と言う意味がある。
だから、相手にも自分にも嘘の無い存在に育って欲しくつけられたのじゃないか?。』
「(誰だ……?
誰が言っていた、言葉だ……?)」
「おい、大丈夫・」
ドッカーン!!!
突然、隣の教室から揺れと爆発音が響き、誠と夕火は床に倒れた。
「つっう、何だ?
今のは?」
倒れた衝撃に誠は正気を取り戻した。
「いてぇ。
隣の爆発音は何となく判るからいいけど、大丈夫か?」
「大丈夫って、何がだよ。」
「何がだよって、お前さっき・」
ドッカーン!!!
状況を言おうとしたら、遠くからまた爆発音が響き、夕火は黙ってしまいぶつぶつと独り言を言い出した。
「なんで、爆発が二箇所から起きるんだよ。
今高等部にいる総合は俺だけだし、片方取り締まってる間に逃げられたら聖二から何言われるか……しょうがねぇ。」
夕火は立ち上がって、入口に向かい廊下に出る前に振り返った。
「悪りぃ。
俺、二回目の爆発音の場所に行ってくるから、隣の第二化学室の実行犯に総合生徒会が来るから大人しくしてるよう言って留まらせてくれ!!」
そう言うなり、誠の返答を聴かずに夕火は走り出して行った。
「返答聴かずに行くのかよ。」
誠は、そう言いながら立ち上がり、廊下に出て隣の教室を観た。
煙がまだ発っているが、教室には誰かがいるのがわかり、第二化学室に入っていった。

誠の由来に響く爆発


(おい、総合生徒会からの連絡で逃げるなと。)