「あれ、ケイくん」
それは、異常な光景だった。
「瑞穂……?」
律夜に手を引かれて歩いてきたのは、どう見ても、あの、川口瑞穂に間違いなかった。
「今から寮に戻るんだ。ケイくんは?」
「科学工作部」
「じゃあ、後の方がいいよ。部室吹っ飛んでるから」
「……またか」
会話の間も瑞穂は黙ってうつむいていた。その体からは、強い力を放出した名残が感じとれる。
彼の力は一年生としてはかなり強い。しかし、不安定で感情に左右されやすく、一度、興奮して小さな爆発を起こしたこともある。
嫌な想像をした道野に、律夜は笑顔で言った。
「瑞穂くんじゃないよ。ボクらずっと多目的室にいたんだもの」
「そうか、」
なにかを、隠しているような気がしたが、聞き出そうとは思わなかった。それが必要であるなら、いつか瑞穂の口から直接聞くことになるだろう。
「そうだよ。……じゃあ、ちょっと急ぐから」
歩き出そうとした律夜の動きが、ぴた、と止まった。瑞穂が、立ち止まったまま、動かないのだ。
律夜は、その顔を覗きこむと、一つため息をついて、道野に向き直った。
「別に、明日になれば分かるのに」
「なにが、」
挑むような上目づかい。
それは、ちょっとした予定であるかのように口にされた。
「ボクさ、学校やめるんだ」
「え、」
「やめるんだよ、……それだけ」
言うと、瑞穂を引きずるようにして、廊下を歩いていく。
その背からは、なにも読み取ることは出来なかった。

本当、は、嘘、の裏側にあるんだ。