部屋には2つのベッドが両脇に並んでいた
それぞれのベッドの隣には簡単な机が置かれていて
そのベッドの片方に薄い青髪の色をした全体的に線の細い少年が腰をかけていた
何やら細かい字がびっしりの書類を読んでいるようだ

「ふぅ…」
自然とため息をすると同室の少年が戻ってきた
と、いうかシャワーを浴びてたらしく肩まで伸ばされた銀髪からは水が滴っている
「あーぁ…相変わらずですね」
そんな状態を見てまたため息ひとつ

「良いだろ別に
ってかお前こっちの姿好きだから満更でもないくせに」
そうやって微笑んで近づいてみる
顔が、近い


「えぇ、貴方のことが好きです
それが何か問題でも?」
赤面ひとつない男性につまらなそうに離れ、向かいのベッドに腰をかけた

「ちょっとは照れろよ…」
ぼそりと呟いてみる
「今さらなんですよ、今さら」
書類を脇の机の上に置いてから何処からかバスタオルを取り出すと今度は逆に近づいてみる


「ね、恥ずかしくないでしょ?」
顔は再び目の前で唇もくっつきそうな距離
それだけ近いと顔もまともに見れない
それでも声質で小悪魔な笑みを浮かべているのが分かった

「お前って本当に…」

「本当に…
なんです?」


吐息があたる




「やっぱり何でもねぇわ」
無意識に顔を反らす

「意気地無し」
少し頬を膨らませて手に持ってたバスタオルを投げつける

「…そういやその資料の候補どうすんの?」
投げつけられたバスタオルで頭をガシガシ拭きながら尋ねる
「別に私は誰だって良いんですがね大学の生徒会メンバーが凄いはしゃいでまして…
めんどくさ…」
そういって膝の上にのっかってみる
勿論先程まで見ていた資料も忘れずに渡す


「新入部員ね…」
膝の上に乗られるのに特に疑問も持たずに資料を眺める

「妥当は道野あたりかと」
「1Aの?」
「えぇ、仕事の要領良さそうですし」
「ふーん、分かった
じゃあ俺らの候補は道野で良いな?」
無意識に頭を撫でる
「はい」
胸板に頭を刷り寄せる
シャンプーの匂いが心地よかった


「じゃあ今日は寝るか」
無言で頷くと何の躊躇もなく一緒の布団に入る




「おやすみ、林檎」
「おやすみなさい、会長…
ふふ、今は違いますね
おやすみなさい、昴」

今日は暖かい腕の中で寝れることに喜びを感じながら林檎は幸せを噛み締めた
久々の新月の時間もあと僅かしかないのだから…