ひとつの病院があった
その病院は帝南から電車で30分のところにあって
病院または研究所でもあった
力が強く、まだまだ能力の自制が出来ない誠はよくこの病院に通わされていた
だから当然顔見知りも多い

誠が病院に入ると顔を見るたびに
声をかけられる
頭を撫でられる
しまいには抱き付かれたりもした

毎日の様に通わされていたこの場所は誠にとって家みたいなものでもあった

ただ今回来たのはけして誠が能力を爆発させたからではない


ただ会いにきた

行動しなければ変わらない

そう思ってしまったから



その病院の一室
誠は律儀にノックをした
中からはどうぞと透き通った声が聞こえた

扉を開くとそこは個人部屋
ただ個人部屋にも関わらずなにもおいてないシンプルな部屋

ただ真っ白な部屋に真っ白なベッドが置いてあるだけ
そこに1人の少年がいるだけ



「さて、俺がここまで来たんだ話を聞かせてもらおうか」

その人物は一瞬この場所に誠がいることに目を見開いたが直ぐにいつもの調子に戻ってにこやかに笑った

「えーどうしよっかな」

「いいから言えよ
俺が、いや俺の家がやってること」



「いやだよ」

一点に見つめた誠の視線をそらす
そらされた後も誠の目線は目の前の人物にそそがれた
それからひとつため息

「あまり気は進まんが仕方ない」
その言葉にビクリと肩を震わせる

「なに、ボクを脅す気?」

「……あぁ
ま、脅しではないか
ただクラスメイトとやらにお前が病院(ここ)にいると伝えるだけだ」


「なにそれ
最高の脅しじゃない」
目を細めて笑う




「俺は卑怯だからな」
その言葉は悲しみに溢れていた