ドアが開くとエレベーターの中から幼稚園児位の少女が二人、手を繋いで出て来た。
「おかあさん、もうすぐ退院できるんだって」
そんなことを笑顔で話し合う少女の姿に、皆少し緊張がとかれたような顔をする。
「でもおかあさんがいた七階って窓のお外すごくきれいだったね」
思いがけず自分達の降りる階が少女達の話に出て来て、何の気無しに秀が少女達の方へ振り返ると、一瞬息を飲んだ。
少女の肩に赤い、と言うには黒く濁った花びらが付いていたのだ。
赤黒い花びら、晶先輩が何か言っていなかっただろうか。余り良い内容ではなかった気がする。秀がそう考えていると「ねえ、秀」と優に呼ばれた。
「え、あ、ごめん、何?」
と尋ねると優は少し呆れたように、そして気まずそうに
「エレベーター、乗るんでしょ?先輩がドア開けて待ってくれてるよ」
見ると帝南の制服に身を包んだ青年が『開』のボタンを押して待ってくれているようだ。表情はかなり不機嫌そうだが。
「すみません、ありがとうございます」
頭を深々と下げながらエレベーター内へと入る。
病院らしく大きな鏡がある以外は真っ白な無機質な作りだ。
目的の階へのボタンはすでに押されており、エレベーターが上昇する。

“君、あんな小さな女の子が好みだっけ?先輩がいない二人きりの空間ならそんな嫌味を言ってやりたいのに”
そんなことを思いながら優は軽く息を吐いた。