気がつくと、病院の見慣れた白い天井と心配そうな兄の顔が目の前にあった。 「癒音、だよな?」 こんなに小さくゆっくりとした話し方は珍しい。不思議な問いに戸惑いながら頷くと、茶羅は安心したように長い息を吐いた。 いつの間にか手を握られている。兄らしくもない ...
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カテゴリ: 本編
74. 思考の中断と少しの嫉妬
ドアが開くとエレベーターの中から幼稚園児位の少女が二人、手を繋いで出て来た。 「おかあさん、もうすぐ退院できるんだって」 そんなことを笑顔で話し合う少女の姿に、皆少し緊張がとかれたような顔をする。 「でもおかあさんがいた七階って窓のお外すごくきれいだった ...
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73. いやなかんじ
「お兄ちゃん」 どこか聞き覚えのある声が、ロビーへ続く廊下へ響いた。 黒髪の少女は、可愛らしい顔ではあるが、中高生にはありがちな、見覚えがある、とは言い切れない顔だちをしている。 隣に並んで歩く道野が、少し動揺したのに気づいた瑞穂は、どこでその声を聞いた ...
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