カテゴリ:本編 > 本編(柚木)

気がつくと、病院の見慣れた白い天井と心配そうな兄の顔が目の前にあった。 「癒音、だよな?」 こんなに小さくゆっくりとした話し方は珍しい。不思議な問いに戸惑いながら頷くと、茶羅は安心したように長い息を吐いた。 いつの間にか手を握られている。兄らしくもない ... もっと読む

エレベーターが七階に着くとあの不愉快なノイズはほとんど感じられなくなり、開きかけていたケイの額の目もす、と閉じた。自分の力の波を感じない。まるで体の中のもう一つの生き物である“力”が強制的に眠らされているようだ。外来に来たことはあるものの病棟に足を踏み入 ... もっと読む

「お兄ちゃん」 どこか聞き覚えのある声が、ロビーへ続く廊下へ響いた。 黒髪の少女は、可愛らしい顔ではあるが、中高生にはありがちな、見覚えがある、とは言い切れない顔だちをしている。 隣に並んで歩く道野が、少し動揺したのに気づいた瑞穂は、どこでその声を聞いた ... もっと読む

「なんで隆がここにいるんだ!?」 秀のかすかな吐息が耳をくすぐった瞬間、前の座席から聞こえてきた大きな声が、それを遮った。 優は秀と丸くなった目を見合わせ、声のした方を、そう、と伺う。 「……うるさい」 ため息混じりの言葉についで、兄さん、と咎めるような ... もっと読む

「あんまりさ、勝手なことしないでくれる?」 この校舎のなかで、酒谷にこんなくだけた口調で話すものは多くない。 振り返った酒谷は、予想もしない人物の登場に、微かに上まぶたを動かした。 長い白銀の髪は、微かな光を帯び、瞳は、血潮の紅。 普段とは違う、人間の姿 ... もっと読む

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