気がつくと、病院の見慣れた白い天井と心配そうな兄の顔が目の前にあった。
「癒音、だよな?」
こんなに小さくゆっくりとした話し方は珍しい。不思議な問いに戸惑いながら頷くと、茶羅は安心したように長い息を吐いた。
いつの間にか手を握られている。兄らしくもない ...
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カテゴリ:本編 > 本編(柚木)
73. いやなかんじ
「お兄ちゃん」
どこか聞き覚えのある声が、ロビーへ続く廊下へ響いた。
黒髪の少女は、可愛らしい顔ではあるが、中高生にはありがちな、見覚えがある、とは言い切れない顔だちをしている。
隣に並んで歩く道野が、少し動揺したのに気づいた瑞穂は、どこでその声を聞いた ...
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